01
trap trip






何もかもがいやだった。雁字搦めにされた人生、偽りで塗りつぶされたような笑顔ばかりの人間、人の気持ちなんて二の次三の次。大事なのは結局自分。ねぇ、神様。何でわたしは1人なの?何の為に、生まれてきたの?何の為に、誰の為に、何故どうして何でー…?終わることない疑問の螺旋。それに終止符を打とうと決心したのはつい最近のことだった。“不眠症”という理由で買った睡眠薬。唯一の癒やしだったジャンプともこれでおさらばか…なんて考えるけど、今の状況に何て不釣り合いなんだろう。滑稽だな、なんて考えながら、蓋から取りだした白い錠剤をひとつぶ、ごくり。ふたつぶ、ごくり。みっつ、よっつ、いつつ…何個めだかもうわからなくなってだんだんと眠たくなってきた。だんだんと薄れていく意識の中頭の中はアイシールドだけだった。あぁ…今週ヒル魔が峨王にやられて、新しいクォーターバックをセナがやることになって泥門どうなっちゃうんだろう…。マルコも好きだけど、やっぱ、そこは、ヒル魔、に、泥門、に、…勝ってほし、い、な…そうしてわたしは意識を手放したー…。




***




「ーっ…!!」


激しい頭痛に襲われはっと目を覚ます。……ここは…どこ?辺りを見回すも、何もかもが純白、真っ白で目が少しおかしくなりそう。いつの間にか来てる服も純白のワンピースに…って、あ、そうか。わかった。


「わたし、死んだのか」


考えたらわかることじゃないか、何考えてんだわたし。なーんだそっかそっ「残念ながらお前はまだ死んじゃあいねぇよ」「…へ?」


え、誰?顔をあげると、目の前に腕を組んで仁王立ちしながらわたしを見下ろす背の低い(150センチあるかないかのわたしよりも低い…)男の子がいた。うーん小学校4、5年あたりってところかな?


「…聞いてる?サン」
「はいはい聞いてます聞いてますよ…ってえぇ?!!」


い、今この子わたしのこと“”って名前呼んだ…!!やっぱここ変じゃん!って変なのはここじゃなくてこの子かっ!!


「俺別に変な者じゃねぇし」
「あーそーですか…んん?」


わたし何か喋ったっけ?……。いやいやいやちょっと待てよ落ち着け!!わたしは何も喋らずただ心で(頭で)そう考えてただけのはず。いくらなんでも自分で気付かないうちに思考だだ漏らしなんてしたことないし…。と、なると。「そ、あなたの心を読ましていただいてまーす」あー、やっぱり!なーるほど…

「って納得出きるバカがどこの世界ににいますかコノヤロォーーーッッ!!!!」


わたし今ちゃぶ台あったら絶対ひっくり返してたね、うん。星○雄馬もびっくりだよ。って逃避するなわたし…!!すーと息を深ーくすって、ゆっくり吐き出すと幾分かはさっきより落ち着くことができた。


「…で、ここはどこ……ってその前に…」


そういえば男の子に名前聞いてなかった…!たくさん聞きたいことはあるわけだし、名前くらい知っておかないと話にならないじゃんか!(わたしのばかーっ!)


「俺は仁。神候補第一正助手。まー簡単に言えば神様の跡継ぎ候補みたいなもん?」
「へー…ってえ?えぇぇえーっ?!!」


ナイスリアクションありがとう、っといってにっこり笑う仁。(年下っぽそうなので呼び捨て決定!)その笑顔は純粋って感じがしてちょっとドキッってきたよ…!!にしても神候補って、天国の世界も大変なのかなぁー…?


「神のじーさんが弱ってきてて、そろそろ世代交代っつうかそんな感じで俺が候補に選ばれたっつー訳。ま、そんな事はおいといてっていうか気にしなくていいカラ。」


話すとながーーーい訳がありそう…にしてもルックスいいなぁ仁。身長は…まぁ置いといて、目はまんまるで大きなくりっとした目で目力もめちゃありそうだし、髪の毛は茶色っていうかブラウン?っていうのかな、薄い栗色でさっらさらだし…まるでタレントさんみたい。「どーも」


「いえいえ…っていうか一個言っていい?」
「なんでも。」
「あのさ、心読むならわたし喋らなくてよくないですか?」
「あーじゃあもう読まない」
「…ほんとに?」
「ほんと。約束します」


じっとその破壊力抜群な顔と目に見つられては「はい」としか言いようがない…!「で、そろそろ本題に…!」焦って話をそらそうと喋ったら声がうわずった。は、恥ずかしいなわたし…!!


「あぁ…そうだな。じゃあままず、ここはどこだかわかる?」
「…天、国?」


だって仁は神候補で確かなんちゃら補助とか言ってたし…それに周りは純白。わたしは座ってるけどもしかしたら浮いてるのかも知れないっていうくらいここは方向感覚を失ってしまって、そんな異空間とりあえず現実ではなさそう、だだし。白=天国ってイメージからだけど。


「だから違うって。ここは天国じゃない」
「…じゃあどこ?ここは…」
「ここは…  













現実世界と、天国の狭間。
名前を…






“Between Heaven and the world”」






さらっと真剣な顔をしたままで超絶よすぎる発音でそう言った仁。か、かっこよよすぎる…! …そしてほんとさーせん仁。


「ごめ…すっっごいかっこよかったんだけどさ…」
「“Between、Heabn、and、the、world”…そのまんま、“天国と世界の間”って意味ですよ、理数系のサン」
「うぇっ?!な、そそ、そんなことまで知ってんの…?!!」
「当たり前じゃん。俺を誰だと思ってんの…?」


にやり、と怪しげに、だけど神秘的に微笑む仁にどきっとさせられたのは言うまでもない。にしても今の笑い方、あの人を、思い出させた…。蛭、魔、妖一…。もうヒル魔の活躍を見ることも、あの微笑む姿を見ることもなにもできない、のか…。


「ヒル魔って…好きな、人…?」
「!や、約束やぶっ「蛭魔妖一って呟いてましたよサン」
「ーっ…!!ま、まじですかっ?!」
「うん。マジよマジ大マジ。」


嘘…ッ!って仁が言うから嘘じゃあないんだろうけど…!わたしこれじゃあ未練たらたらで死んでしまった子じゃないか…!って、ちょっと待って。そういえばわたし死んでないって仁が…


「じゃ、じゃあ何でわたしはここに…?」


恐る恐る聞く。声が、震えてる。情けないなぁわたし。やっぱり何だかんだいってこわいんだ、“死”、が。わたしの何もかも大切なものを奪い去って、最後はわたしの命までもが蝕もうとしている“死”が、怖いんだ。


「…なん、で?じん…」


再度訪ねるとさっきとは打って変わって真剣な表情をした仁がしっかりとわたしの視線を捕らえてー離さ、ない。手のひらにじんわり汗がにじんで背中につーっと滴が流れ落ちるのがわかった。流石、というべきなんだろうなきっと。この目力はそう簡単につくつくもんなんかじゃない、持って生まれた天性ー…頭の変に冷静な部分がそんな根拠が微塵も無いことをぐだぐだ考えていた。



「…汝我に試練与えたり。我汝に試練与えたり。しかし汝に一時の夢与えたもう。我試練越えたとき汝の夢時終わりの鐘鳴り響くとき。その時ぞ全事の終止符打たれたりー…。」



「ー…え、」


いきなり言われた沢山の言葉にもちろんわたしは理解することなんか出来ず、ただ驚きの声を漏らすしか出来なかった。


「…つまり、サン…






あなたの夢、何でも一つ俺が叶えてあげますよ。」







(神様、ほんとですか?)












(080323)