20
leave hospital or escape?
ガガショーン!ドシャーン!放課後の部活練習の時間の校庭に響き渡る練習音。一輝たち…自分たちから練習に来てる…!栗田さんもすっごく嬉しそう‥ってわたしもすっごい嬉しいんだけど!
***
久しぶりの練習時間はあっという間にすぎてしまい、気付けばもう終わりかー…と言っても今日はあんまし仕事出来なかった‥というかさせてもらえなかったんだけどね…
「まったく…ったら黙って勝手に退院しちゃって」
「ごめんって、まも姉‥!だってあんまりひどい怪我じゃなかったし…」
「ひとりで立てなかった様なやつがか?」
「ヒル魔‥妖一さんっ!」
「なんでフルネームなんだよ」
「いやーあのその間違えたというかなんというか」
ガタッ
「やっすいませんほんと近付かないでくださいぎゃあーっ!!」
いつものクセで“ヒル魔さん”って呼びそうになっちゃって、それで後から気づいて名前で呼び直したら変なことに‥!いやだって妖一さんとか‥やばい、恥ずかしすぎる…!思わずイラついた様な(というかなんか完全イラついてる‥!)目線をしたヒル‥妖一さんが席を立たれたので焦ってわたしもいすから立ち上がって逃げました。
「か、一輝助けて…!」
「なっ、おま、ちょ、はぁ?!」
一番身近にいた一輝の背に隠れることに成功。ごめん一輝だってあの悪魔様ほんきだよ目がなんかさっきより怒ってる…?!
「どけ糞長男」
「ど、どいちゃやだ!一輝っ!」
ぎゅっといつのまにか一輝の服を掴んでいた。ちょ、怖いよほんとヒル魔さん目が…!目がぁ…!!ってムスカやってる場合かばか!(というかまたヒル魔さんって言っちゃってるし…!)
「…どかねぇよ」
「…あぁ?」
「が怖がってんだろうが。」
一輝…なんて男らしいんですか。あんな目が軽くひと殺せそうなひとに向かって…わたしを、守るため、に?いや‥でも、“が怖がってんだろうが”って…
「…っ、った!」
「?」
「や、ごめ、何にもないって言うか」
「っ?!」
向こうからセナがわたしの声を聞いたのか飛んでくる。さすが早いな…ってまも姉いるんだから押さえなきゃセナ!
「どうしたの?」
「え、や、なんもな「くないよね?」
「…」
「‥、」
「…足がちょっと痛いかなー?なーんて」
「「「えぇ?!!」」」
「いや!ほんのちょびーっとだけ、一瞬だけだったから、だいじょぶ」
「もーったら…無茶するからよ、」
まも姉もやってきて、さりげなくわたしをベンチに座らしてくれる。一輝と目が合ったので口パクで「ありがと、」と言うと優しく笑って頭をぐしゃりと撫でられた。(げ、厳さん流…?!)たぶん「気にすんな」って意味だと思う。一輝たちもやっとひとりひとりのロッカーが持てたんだもんね…よかった‥。わたしをベンチに座らしたまも姉がふとロッカーに目線を向けて…?
「あーこんなトコにあった!」
そう言いながら手になにか黒い…板?
「プレスキックティー!」
「!!」
「これ何?」
「キック蹴る時にね、ボール押さえる台。今まで立てかけて使うタイプしか無くて…」
「あわわそのキックティーは…」
「だっ、だめっ!」
「「「?」」」
「…、?」
はっ、なにしちゃってんだわたし。気がついたらばっとまも姉のとこまで走っていて、キックティーを自分で胸に握りしめてた‥。だって、これは、
「そのティーは置いとけ。触んな糞マネ」
「そういう言い方はないでしょ!みんなにだっていつもそうやって…」
「ごめん、まも姉…」
「‥?」
「急に取っちゃって。でも…」
「?」
「これは…厳さんの私物、だから」
「!!そっか…ごめん」
「ううん、わたしこそごめ‥ね…。栗田さんとヒル魔さんも、勝手に触ってすみませんでした」
「…」
「…」
ごとり、もとにあったとこにキックティーを戻す…なんだか、キックティーが泣いてる気がした。寂しそうに。ひとりだけで、孤独と戦うように。
「…っ、すいませんっ!ちょっとわたし、外行ってきますね、なんだか外の空気吸いたくなっちゃった!」
なんだか居づらい空気を作っちゃった。ばか、ほんとにばか、だ。空回り元気で、みんなに心配とか迷惑とかかけてばっかで、ほんと‥何やってんだろ、わたし。…そういえばいまさらだけどわたし厳さんがキッカーってこと知ってるなんてだめじゃん…!どうりで左腕も痛むと思ったら…。(足が痛かったのもほんと)あーあ、ドジしてばっかだ、朝から。…そういえば、なんでヒル‥妖一さんわたしにあ、あんなことしたんだろ…?!阿含も、だけど…ふたりともやっぱからかいたかっただけ、だよね?やめてほしい、な…ぬか喜びするみたいで、苦しい。(阿含はただ嫌なだけだけど)妖一、さんは…「…?」
「えっ?!あ、はいっ!…って、厳さん!な、なんでこんなところに?!」
「それはこっちのセリフだろ」
「へ?」
「いつの間に退院した、この脱走娘」
「あ、あははー…」
はぁ、と厳さんがため息ひとつ「どうせまたあいつら驚かしたいからとかだろ…」す、すごい厳さん超能力者‥?!
「おまえがわかりやすいだけだ」
なっ、そ、そんなことないよ‥!って思ったけど顔の表情だけで考えてることの返事を言われるということはやっぱわかりやすいの‥かな?…ん?なんかグラウンドが騒がしいような‥もしかしてコータローが来てる‥のかな?ちらっと視線をグラウンドに向けるとゴールに向かってキックを蹴る男のひとと、それを見る人だかりと‥そのキックをしている男のひとの周りに見えるのは金髪と大きながたいの栗頭と小さな男の子2人と栗色のショートカットの女の子…って明らかに妖一さんと栗田さんとセナとモン太とまも姉じゃないか。コータロー確定だね、これ。
「きれいなキックですね」
「あ?…‥あぁ、そうだな」
「‥どこかの誰かさんと違って」
「…お前は「でも、」
「でもわたしはきれいじゃなくても、勢いよく男らしいキックが好きだなぁ」
「…ふっ、テメェも物好きだな」
くしゃ、いつもの厳さんのくせで頭を撫でられる。なんだろ、やっぱし昔を思いだしてるのかな?悲しい気持ちもするけど、嬉しいというか、なんだか落ち着く…厳さんの手が、思いださせるんだ、きっと
『、』
『大好きだよ』
『ー…笑って』
「ー…っ」
「?」
はっ、わたし、いつのまにか厳さんの手掴んで…!
「わ、わわ、ごめんなさっ、わたしなにしてんだろ、はは、」
「…、」
「…はい?」
「ー‥言っても聞かないだろいが…無理だけはするなよ」
「げ、ん、さん‥、」
‥優しい目でわたしを見つめる厳さんの目から目が離せない。どうして?無理してるのは、厳さんの方じゃないですか。自分の苦しみも悲しみも悔しさもつらさもぜんぶぜんぶ背負い込んで、どうして、そんな優しい目でひとを見つめられるんですか?‥わたしも、そんな風になれてるの、かな。うまく笑えてるのかな。―…だめだめっ!まったくなに湿気てるんだばかものっ!!
「厳さん、こそ‥」
「あぁ?」
「無理しないでくださいねっ!ひとりで無理なんかしたらこのちゃんが成敗しますからっ!」
「…あぁ、わかった」
ふっと気を緩めたような微笑み…よかった!わたしの取り柄は笑顔だけなんだから、しっかりしないと!…あれ、なんか向こうからずるずるって何か引きずるみたいな音が聞こえるけど…
「「あ、」」
「…妖一、さんと、まも、姉」
妖一さんがまも姉の口を塞ぎながらずるずるってこっちに引きずってくる。…なにこんなことで傷ついてんのよばか。思わず漏れた声が厳さんと被った。…あ、ふたりがこっちに気づいたみたい、‥ってどうしよわたしちょっと外の空気吸ってくるとかなんとか言ってきたまんまだった…!
「?」
ふたりがこっちに向かってきます、どうしましょう。
「‥やっちゃった…」
「なんだお前‥黙って出てきたのか?ほんとに脱走娘だな…」
「げっ、厳さんっ!!」
「冗談、だ」
「…その割によく笑ってるみたいですけど」
「気のせいじゃないか?」
くくく、といつもは見せない笑顔を見せながら頭をぽんぽんとされてしまうのだからなにも言えなくなってしまう。笑えば厳さんも年相応‥とは言えなくても(失礼なんだけど!)それなりには見えるのになぁー、もったいな「おーおー随分と元気なこって」…きた
「わたしは朝から元気いっぱいですけど!」
「ほー?じゃあなんで外に出ていったのかなぁ?」
「そ、それは…っ」
ちらり、厳さんに視線を送る。するとなにか感じ取ってくれたのか「あー、ヒル魔」と厳さんが話し出す。
「俺が呼び止めたんだよ」
「えっ、厳さ「悪かったな、は許してやってくれ」
そういうことを言ってもらいたかった訳じゃなかったんだけど‥な…!どうしようすっごい悪いことをしてしまった…。わたしの言葉も遮られてしまったし‥。
「、足はもう大丈夫なの?」
「あ、うん!足はもう大丈夫っ」
足は‥ね、…腕はなんかまだちょっと痛いんだけど―‥「腕が痛むのか?」‥―え、耳元で聞こえた声、は、まぎれもなくさっきからずっとそばにいるひとのもの、で、「げん、さん‥?」
「…あいつから聞いた。主務のボウズも知ってる」
あ、仁が教えたのか…ってことは傷も見られちゃった…?!うわぁ、あの傷どんどん痛々しくなっていくんだよなぁー‥なんか縛られたあとみたいになってきてるんだけど一歩見間違えたらなんか危ないよねこれ。
「あ、大丈夫です。ちょっとしくじっちゃって、」
「…バカ野郎」
「厳さんに言われたくないですよ」
あはは、自然と笑いがこぼれる。早く、一刻も早く厳さんにもデビルバッツに戻ってほしー…
「はぎゃっ?!なっ、ちょ、妖一さっどこに行くんですか?!」
「うっせぇ、黙れ」
「なっ…!げ、厳さんまた今度!失礼しまーすっ!」
急にこんどはわたしが妖一さんに腕を引っ張られずるずると引きずられてるんですが…!なんだか怒ってる雰囲気でちょっと怖いので反抗せず黙って引きずられることにしました。厳さんに引っ張られてないほうの手で手を振ると、厳さんも軽く手をあげてくれた。
「ぎゃ、ちょ、待っ」
「ヒル魔くん!止めて!」
「わわ、まも姉わたしは大丈夫「じゃありません!」
「そうねはいすいません」
ってなんでわたしが謝ってんのー?!!ていうか、あの、その、お二人ともオーラがとてつもなく怖いんですが…!!ガシャンッと勢いよく部室の扉が開かれる。「もう!扉が壊れるじゃない!」わたしもまも姉の意見に一票。だってせっかくの新しい部室が長持ちしなくなっちゃう…!
「きゃっ、」
ばんっていう音と背中に感じる冷たい‥壁…‥朝と、同じ状況。まず、い、だってここにはまも姉がいるわけで妖一さんとまも姉は…!
「な、にするんですか」
「さっきなんで糞ジジィといた。5秒以内に答えろ」
「…っ、外に出たら厳さんにあった、んです。それで‥」
「いちゃついてたと?」
「いちゃついてなんかいません!…っていうかもう帰ります、わたし」
「誰が帰っていいつった」
わたしのことはどうでもいいとして、さっきからまも姉の姿が見えないのに加えていつもの怒り声が聞こえないのが余計わたしの不安を掻き立てる…。まも姉、後ろからただ黙ってじっと見てる、の?だめだよ、そんなの。まも姉が傷ついちゃうよ、気付いてよ妖一さん…っ!
「…っ、なっ、待て糞チビマネ!!」
「っ?!」
さっと一瞬で壁と妖一さんの間から抜け出して自分のカバンを掴んで走る。
「失礼しましたっ!」
妖一さんとまも姉の声が聞こえた気がしたけど、それを遮るようにばたんっと扉をしめて校門まで一直線。にしんどいなこれは…!さすがに、もう追ってきては、ない‥ね。これで部室には妖一さんとまも姉のふたり、っきり‥か、。心臓がどきどきばくばくずきずきして、うるさくて仕方ない。
(ときめき、酸素不足、苦痛)
(090310)