06
obstacle and assist
「…った、!って…また…」
純白の世界。おいおいどういうことだよセニョリータ。もしかして、もう、終わり、なのかな…?そんなとき、「にゃあー」と、か細い聞き慣れたような声がしてそちらを向く。「あ!」あのルイさんのときの猫さん!無事だったん…ってちょっと待って。ここはあの時の世界じゃなくて、でもここはあっちの世界と元の世界を繋ぐ架け橋みたいなものだからってあ、あれぇー?考えてたらわけわからんくなってきた…!!いつのまにか膝に乗ってきた猫ちゃんの頭をなでなでしてあげると、目を細めて気持ちよさそうに丸くなった。…周りを見回して確信。やっぱりあの世界、だ。でも、誰もいな…
「…、…、…」
「?!だ、だれ?!」
突然呼ばれた名前に周りを見回すも、ひとっこひとりいない。なに、これ…?!
「、聞いて?」
仁…の声じゃなさそうだけど、ここに呼び出されたってことは訳がありそう。大人しく聞くことにしたわたしは、取りあえず怖いので体育座りをして猫ちゃんをぎゅっと抱きしめた。
「…未来を他人に話すのはタブーよ?。」
そう言われて数々の発言を思い出すけど…実質状況からみてみんなもうアメフトやってるはずだから、3兄弟やセナに言ったことで未来のことはないハズ…
「…!あ、もしかし、て、」
「そう、さっきあなた言いそうになったでしょ?」
わかった、白秋戦のことだ。今はたぶんスフィンクスの前…ってことは、そんなこと言っちゃだめだよね…!
「仁様から話は聞いていたから対策はとってあるわ」
「?対、策?」
「左腕、見て?」
言われたとおり左腕を見る。いつのまにかまた例の純白ドレスになっていて、肩無しなので袖をめくる必要もない………?!!
「な、なな何これ…?!」
左腕に痣のようなものが出来てる。考えてみたらさっき痛みが走ったのも左腕…ってまさか…!!
「ご名答。あなたが何か未来のことを話しそうになる度にその痣から痛みが発せられる。いつもは気絶するほどじゃないけど、今回はその説明にこっちに呼びたかったから、少し強めにしたわ。」
少しって…!あーたひとが気絶しちゃってるんすよ?!少しじゃなくてめっちゃじゃないですか…!!っていうかこれが少しって…止めとこう。考えるだけで怖いし無駄だ…。
「強いて言うならそうね…危険信号みたいなもの。未来を無理矢理変えちゃうのは色々と誤差が生じてしまうから、ね?あと…」
「あと…?」
「その痣は、広がり続ける。」
「?!え、な、んで…?!!」
「…あなたが、決断するまで。」
「決、断?何それ…、?!」
なんか急に眠気が…、まって!まだたくさん聞きたいことがあるのに!眠たさに瞼が何トンもあるんじゃないかってくらい重くなって、体がゆっくり倒れていくことを、まだ冷静な脳の隅で考えていた。
「あとね、仁様から伝言。」
「!じ、ん…?」
「オレの言葉は忘れろ、気にするな。自分の信じる道を切り開いて進めばいい。無理に真実から避けることもない。」
「…、」
「助けが必要なら、作ればいい。それががほんとうに信用できる、大切な人間、なら…―」
じん、まるで離れててもわたしの心は丸見えみたい…。わたしの、しんじるみち。
「あり、がと…―」
ぷつり、また意識が途切れた。
***
「―…、」
見慣れない、白い天井。わたし、どうしてたんだっけ…あ、教室でセナと話してて、…って教室!
「セナッ!!」
「はははいぃっ!」
ばっと起き上がるとなんだかまだ少し見なれないつんつん頭が目に入って、くるりと回ったと思うと大きな目線とがっちり合う。
「!!!だっだいじょうぶ?!」
ぱたぱたとかけよってきてくれて、心配そうにわたしの顔を見る。にっこり笑って「大丈夫だよ」というと安心したようにセナも微笑んでくれた。
「そうだ、ここ、は…?」
「あ、えーと、…部室。アメフト部の…。」
……はい?驚いて当たりを見回すと、机やカジノ台が、…うわぁ、まじっすかべいべー。一瞬しまった、と思ったけれど先ほどの仁の「オレの言葉は忘れろ」発言を思い出して、もう深く考えなくていいんだっけ、とひとり息を吐く。…それになんか急展開!なんて漫画みたいな話、…ってこれは一応漫画か…
「わたしどうしてここに…?」
「え、もしかして覚えてない?」
「えっと、たしかセナに話をしようとして、急に痛みが走って…」
「そのあと、倒れて意識失っちゃったんだよ」
「んで、ここまで…セナが運んでくれたの?」
「え、あ、それは…」
それは?と首を傾げる。ロッカールームじゃなく、こっちの部室にいるってところを見るとやっぱりまだロッカールームは完成してないんだね…ということは、セナのベンチプレスもまだまだ発展途上中という訳で、しかもパワーアップ後も40kgということは…あの教室からここまでわたしを運ぶのにはいろいろと無理がある、なぁ…(悲しいけど…!)となると、必然的に他の誰かがここまでわたしを運んでくれた、という訳で…。
「えと、ここまでを運んでくれたのはね、「俺だ。」
ピキッ。
…あれ、いま空気がひび割れる音がしたような気がする。どうしよう、後ろから声聞こえたんだけど、っていうかわたしを運んでくれ…くださった方が後ろにいらっしゃるらしいんですが、あのしゃべり方と声、は、……ギギギと音が鳴りそうな感じで後ろのカウンターの方を振り向く。思ったとおりのさらさらの金髪と、尖った耳とそれに付いている光るピアス、つり上がった目が見えた。助かったのはその目線がわたしではなくパソコンに向けられていたこと。…ってわたし鈍いな…!なんで気づかなかったんだろ…?!唖然とするわたしにセナが状況説明をし始めてくれる。
「あ、あのね!どうしようか困ってたら、僕を探しに来たヒル魔さんがちょうど来て、それでとりあえず部室まで運ぼうってことになって…「おかげで練習時間が減っちまったんだかなぁー?どう落とし前つけてもらおうかなぁ?」
「ひっ、ヒル魔さん!」
パタンとパソコンが閉じられる音とともに目線がわたしを捕らえる。昨日も見た、はずなのに、冷や汗がつーっと流れて、ごくりと唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。どうしようという言葉が頭をリフレインする中、ぱっとあることが思い浮かぶ。
「…脅迫、しますか?」
「!!」
「っ?!」
ヒル魔さんの顔がほんの一瞬驚いたような顔になり、心の中でガッツポーズをとった。考えてみれば、ヒル魔さんは、わたしの弱点など知らない。当たり前、だってわたしは今までここに存在さえしない人物で、ここ来たのも昨日。弱点も何も、もしかしたらヒル魔さんはわたしの名前さえ知らないかもしれない。
「…ほほーう、自分に脅迫されるようなことはない、そう言いたいのかね?君は」
「…はい、そうですが」
…強い。何も知らないはずなのに、わたしはそれを知ってるのに、あまりにも揺るがない鋭い視線に負けてしまいそうになる。これが、ヒル魔、妖一…。 負けるもんかとぎゅっと唇を噛みしめ、目をそらさないようにする。
「…脅迫なんかいらねぇよ」
「はえ、?」
あまりの突然の予想外発言に、なっさけない声が漏れた。え、ど、どういうこと…?わたしの瞳が不安で揺らいだのを彼が見逃すはずもなく、ぞくり、と悪寒が走っていつのまにか下げてしまっていた視線を上げると、ニヤリと悪魔のような笑みが見えた。やば、い…?
「ここまで運んできたのは誰だっかなぁ〜?」
「!?」
「それにうちのだぁ〜いじな主務くんまで引き止めてくれちゃって…」
「ヒル魔さんそれは僕も「だ〜れかなぁ?」
「うっ…!」
たしかに、貸しを作ったままなのはわたし好きじゃないし……奴隷になるだけだし、ま、いっか!きっと泥門生の弱点探しとか、大量のねずみ算のひとつにただわたしが加わるだけ。ひとの弱み探しかー…何だかちょっと気が引けるけど…
「わっかりました!引き受けますよ、奴隷ですよね?ねず…っ!(言っちゃだめか?!これ!)じゃなくて、えと、人の弱みとか見つけたらどっかに電話とか…「ケケケ、なーに寝言言ってやがる」
「…え、?」
「テメェは奴隷でもアメフト部の奴隷。」
「?!な、ま、さか、それ、って…!!」
「テメェは今日からアメフト部のマネージャーだ!YAーーーHAーーー!!!」
ガチャコ、と聞きなれない金属音の後に、ダラララララとこれまた聞きなれない銃声音が響く。……って
「う、嘘でしょ…?!な、なんていう…」
少女漫画的展開!!?
(予測可能?不可能?な日常の開幕)
(080411)