08
self-introduction
「どう、して…?」
わたしはさっきここにいる理由を結局セナに話せないままで終わってしまった。だから、疑ってもおかしくないのに。怪しんで、入部を嫌がってもおかしくない、のに…―「、」セナが優しくわたしの名前を呼んで微笑む。
「僕は、を信じてる。」
「セ、ナ…っ」
「だから、デビルバッツでみんなで一緒にクリスマスボ…ってうぇええッ?!!!」
嬉しい、嬉しすぎる。っていうか何ていい子なのセナ…!喜びのあまりにがばっと勢いよくセナに抱きつく。一瞬ふらりと倒れるかと思ったのに、とっさに受け身をとったのか、力一杯堪えたセナのおかげで倒れることはなかった。でも恥ずかしいのか驚きの声をあげてあたふたしている。
「え、ちょ?!どうしたのっていうか、え、」
「セナ…」
「?…、」
「ありがとう」
そっと耳に囁くように、セナにしか聞こえない声でいう。すると、じたばたしていたセナの動きがぴたっと止まり、わたしの肩に手を置いてゆっくり体から離させる。…セナの半分は優しさで出来てるね、きっと。いや、絶対。だって、なにもかも、動きも言葉も、すべてが、(優し、い)少し赤みが残ったセナの顔が可愛くて、またぎゅっとしそうになった…こ、これじゃほんとに変態おんなじゃないかわたし…!!目線をセナに合わせると、にこっと自然にお互いに微笑みあう。…と、そのとき、ガガガガガガと突然なった凄まじい銃声音に体ごとびくりと跳ね上げる。
「「ひぃぃぃっ?!!!」」
って、セナとびびった声かぶった!じゃなくて!やっとのことで鳴り止んだ銃声音の発信もとをそろりと振り向き見る。ガチャコ、と準備の音が鳴った。ま、まだ続くの…?!!と思いきや。
「そーゆーこった!!何か文句あるやつぁ俺にいいやがれこの糞野郎共ォッ!!!!」
ガガガガガガ、い、痛いよ耳が…!そんなに撃たなくったってみんな話くらい聞くでしょ!(悪魔サマの言葉なら尚更ならなおさら!)三兄弟だって何だかんだでいい人たちだし…でも…もしかしてさっきのって、わたしを庇って…くれ、た…?ドキリ、突然胸が跳ね上がるように大きな音をあげて、一瞬ぎゅっと息が苦しくなった。「っ、…?」…何だったんだろう…?首を傾げていると「ー!」と少し遠くからわたしを呼ぶ声がしてそちらに目線を向ける。気付けばセナがわたしに向かって手でおいでおいでをしていて、回りにはデビルバッツメンバーが集まっていた。とりあえずわたしが呼ばれているようなので小走りでそちらに向かう。
「頭傾げてたみたいだけど…どうかした?」
「え!あ、いや、な、何でもないよ!」
「そ?あ、みんなというか、デビルバッツメンバーを紹介しておくね!」
「あ、うん!」
そのためにみんな部活終わったのに集まって待っててくれたんだ…!といっても、わたしみんなのこと知ってるよー…!なんて言えるはず(ていうか言っていいなんてはず)もなく素直にみんなの自己紹介を聞くことになりました!
「えーと、はじめまして!デビルバッツにようこそ!僕はセンターってとこをやってる2年の栗田良寛っていうんだ、よろしくね!さんっ!」
「はいっ!栗田さんっ!こちらこそよろしくお願いします!あと…“”って呼んでもらえませんか?」
「え?!!」
「だ、ダメですか…?」
「いや…むしろい、いいの?」
「はいっ!もちろ…ってうわぁ?!!」
「よろしくね!ーっ!!」
そ、そんな軽々とわたしをぶんぶん振り回すなんてさすが栗田さん…!!っていうかこれ楽しいかも…じゃなくて次のひと!
「俺雷門太郎!ポジションはワイドレシーバー!キャッ「キャッチだけなら誰にも負けねぇ!…って?」
「!!!?」
「そういう一途なひと、大好きッ!」
「「「「?!!!!」」」」
「よろしくお願いしますっ!雷門く…」
「もももももモン太!」
「えっ?」
「んなよそよそしい呼び方すんなよ、俺ら仲間なんだからよ!」
「モン、太…っ!ありがとっ!!」
嬉しい言葉に自然と頬が緩む。そしたらなんかモン太は後ろむいて「俺にはまもりさんが…!」とか何とか…?そういえばモン太はまもりさんが好きなんだっけ…!応援したげなきゃ!お次は…?
「こ、小結大吉ッ!ライン!フゴッ!」
「です!よろしくお願いします!えーと…なんて呼べばいいかな?」
「だ、大吉ッ!フゴッ!」
「えっ?!な、名前で呼んじゃっていいの…?」
「フゴッ!」
「ありがとうっ!大吉ッ!!」
「―っ!ふ、フゴフゴ…」
すごい、小結くんを大吉って呼ぶなんて…!というか、やっぱみんな呼んでほしい呼び方があるんだなぁ…わたしもあるし、みんな同じってことか…むやみに呼び方決めちゃうの止めよう!うん!ではお次っ!
「え、えーっと、2年の雪光学です!ポジションは、」
「まだ、ありません…?」
「!や、やっぱ僕はレギュラーには見えな「違いますっ!!」
「…えっ?」
「大事なひとだからこそ、大事に育てられるものなんです。貴重な才能を簡単に潰してはいけない、だから…」
「それって、」
「最高の秘密兵器ってやつですね!」
「…!、さん…」
「って呼んでください!えーと…先輩は何てよんだらいいですか?」
「みんなからは、“雪さん”って呼ばれてるけど…」
「はいっ!じゃあ、よろしくお願いいたしますっ!雪さんっ!」
雪さん…やっぱりポジション無い、んだ…。でもさっき言った言葉は嘘じゃない。大事だからこそ、才能があるからこそ、それを最大限活かすために育て上げる。道のりは長い、けど…雪さんなら、きっと大丈夫!えっとお次は…
「あ、十文字くん、」
「…俺ら紹介いらねぇよな。じゃ、帰るぞ」
「あ!ちょっと待って!あのー何てよんだらいいですか?」
「…一輝。」
「へっ、」
「浩二ぃー」
「えっ、」
「庄三」
「えぇえーーーっ?!」
「何だよ文句あっか!」
「や、じゃなくて、…な、名前で呼んじゃっていいん、ですか?三人共」
「俺らがいいっつってんだからいーにきまってんだっろ」
「あと敬語も無しだぞ」
「!ありがとうっ!これからよろしくお願いしますっ!一輝、浩二、庄三っ!!」
「「「―…っ!!!あ、あぁ…」」」
じゃあな、と帰ってしまう三人…でも三人を呼び捨てってなんかす、すごいな…!(驚きすぎてハァハァ三兄弟みたいになっちゃったよ!)じゅ…じゃなくて、一樹なんかてっきり“もんじ”とかかと思ってたよ…正三は“トガ”浩二は“黒木”かと思ってた…って勝手な予想だったんだけど!見事に予想は大はずれだな…。で、次でさい、ご…は…
「えーと、姉崎まもりです、マネージャーやってます。」
「知ってます!」
「え?」
「あ、いや、その、ま…姉崎先輩有名ですから!」
「そうなの?あ、さっきは指さしちゃったりしてごめん、ね?」
「え!あ、そ、そんな謝らないでください!!わたしの為を思ってやってくださったことなんでしょうし…!」
「余計なお世話焼いちゃって…」
「いえ!とんでもありません!あの…わたしこそ、のろくて、ばかであほでどんくさくて、足手まといにしかならない奴ですが、これからよろしくお願いいたしますっ!!」
「こちらこそよろしくね、ちゃん?」
「あ、って呼び捨てで!あとあの…」
「?どうしたの?」
「ま、“まも姉”って呼んでいいです…か…?」
「え…?」
「あ!その、セナが呼んでるの聞いていいなーなんて思ったんですけど…いやですよね!すいません馴れ馴れしいこと言っちゃ…「ほんと…?」
「へ…?」
「わたし妹とかいなくて、ちっちゃい頃からずっと欲しかったの!そう呼んでもらえるならわたしも嬉しいわっ」
「ほ、ほんとですか…?!」
「えぇ、もちろんよ!よろしくね、っ」
「は、はいっ!」
「なんならほんとのお姉ちゃんだと思ってくれて構わないからね?だからそんな堅苦しい敬語じゃなくてもいいから」
にっこり優しく微笑むまも姉。ま、まさに女神…!勇気振り絞って聞いてよかった!まも姉も喜んでくれたみたいでわたしもすっっごい嬉しい。確かに…そう考えてみれば、セナや陸にしても弟的存在だもんな…。
「じゃあ、帰ろっか!」
「あ、まって!まだ自己紹介終わってない人がいるよ!」
「え?!誰?!」
帰りを誘おうとしてくれたセナがわたしの言葉に驚いたようにまわりをきょろきょろと見回す。もー、ほんとセナったらせっかち!っていってもちょっと意地悪問題なんだけど。
「わたしの目の前にいるんですが!」
「…へ?もしかして、ぼ、僕?!!」
「ぴんぽーん!」
「僕もするの?!もう知ってるのに…」
「ちゃんとした自己紹介はまだだもん」
「もー…えーと、小早川瀬名です。えと、しゅ、主務やってます」
「それと…」
「あーっ!それは…!!」
「まも姉には内緒なんでしょ?知ってます」
「あと…セナって呼んでください。」
「はいっ!ばかであほでのろまな役立たずものですが、よろしくお願いいたします」
ぺこりとわざとらしく丁寧にお辞儀をする。するとセナも「こちらこそ、」とわたしと同じようにする。案外セナはのりがいいんだなぁなんて思いながら自然とあがる頬をそのままにしていた。
***
「ほ、ほんとに大丈夫?」
「う、うん!…たぶん…」
「なんなら私も…」
「「いや、それはやめといた方が…」」
「?」
自己紹介のあと、みんなは帰宅のためそれぞれの帰り道につき始めていて、セナに誘われてわたしも帰ろうかなーと思ったのだけれど…ひとつ、忘れていた。―…ヒル魔さんへの挨拶がまだ、だ。なんだかんだで面と向かって“よろしくお願いします”ってことばを伝えてない…さすがにキャプテンにしないのはマズいだろうし、私的にもなんかいやだ。と言うわけで、それをセナとまも姉に相談したら「まだ部室にいるはず」ということを聞いてやっぱり、と思いつつ歩き出し、只今部室前。電気が窓から漏れていることから中にひとがいるということは容易にわかった。けど、やっぱ怖いな…!だだだだってあの蛭魔妖一だよ?!今だって仕事中だろうし…!邪魔しちゃ悪いかな…でも…うん、さっさと言ってぱっぱと邪魔しないで帰ろう!
(ラスボスに挑め!)
(080601)