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become aware of my heart






「あっつーっ!」


とうとうやってきました!泥門デビルバッツVS太陽スフィンクスの日本代表決定戦!セナが暑い…って呻いてたのは知ってたけど…ほんと暑いなぁ…!6月なのにセミってどういうことですか!?恐るべし…。


「あっ、ドリンクはそこに置いといてくれる?」
「あいあいさーっ!」


んでもってわたしは正式マネとしての初仕事。結果は…わかってるといえば、わかってる、けど…わたしが知ってる通りの未来になるとは限らない、んだ。だから、せめてみんながしっかりした道を歩めるように…!!


「…っ、…っ、…―っ!」
「ふぇっ?!はい!!」
「拳なんか握りしめて…どうしたの?」
「せ、セナっ!ううんっなんにもないよっ!」
「そう?ならいいんだけど…」
「それよりっ!…‥今日も頑張って下さいね、アイシールドさん!」


最後の応援の言葉はセナの耳元で誰にも聞こえないように小さく囁く。「わわわっっ!」セナは慌てたようにばたばたしたと思ったら、いきなり真剣な顔になって「わかった、ありがと」と言ってささっとやぐらの方へ行っちゃった。やっぱ暑いよね…セナ顔真っ赤だったけど大丈夫かなぁー…?あ、わたしもやぐら作り手伝わないと!


「何作ってるんですかこれ?」
「もーっセナったら、やぐらだよ!」
「やぐら?」
「高いとこれから陣系とか撮るためのものだよ!やっぱし上から撮った方がわかりやすいこともあるからね」
「さ、さすが…」
「なに言ってやがんだ糞チビ!アメフトの常識だ!」
「!!」
「?モン太どうし…」
「な……」
「「「何あのピラミッド!!」」」


あー…そういえば太陽スフィンクスのやぐらってばかみたいにおっきかったんだっけ…でも確かに近くで見たらほんとおっきいなぁー…!泥門のやぐらの3倍は軽くありそう。


「泥門のやぐらチビすぎ〜」
「チ「!!あーっ!まっ、まも姉ーっ!!」
「!ど、どうしたの?!」
「い、いやードリンクどこに置いたかなー?って…」
「もーそれならさっきあっちに置いたじゃない…。いきなり大声出すからびっくりしたわよ?」
「ご…ごめん、なさい…」


しょうがないな、って感じに息を吐き出しながら優しく笑ってまも姉がわたしのあたまにぽんと手を置く。


「“ごめんなさい”?」
「え…、あ、…まも姉…?」
「ん?」
「ごめん、ね?」
「…も〜っ!可愛いっ!」
「ふぎゃあっ!ま、まも姉っ?!」


い、いきなりまも姉が飛びついてきた…?!わたしなにか言ったかなぁ…?にしても女なのに照れちゃうっていうか、どきどきしちゃうよ…!


「ま、まもね…ぎゃあっ?!?!」
「!…って、ヒル魔くん!」
「ただでさえ暑苦しいーのにひっついてる暇があんならさっさと仕事しやがれ糞マネ共!」
「ちょっと…!」
「わ、わたしはだいじょぶだからーっ!」


って言っても首根っこもたれてずるずりひっぱられるのは痛いんですがヒル魔さん…!ほんと軽々引っ張る、よなー…腕だって細いのに…ってどこみてんだわたし!!「ぎゃっ?!」ぼすんっといきなり離されたので盛大に尻餅ついたよ…い、痛い…!ってヒル魔さん携帯で…誰かに電話かな?すぐ切っちゃったけど。あ、もしかして…


「「なにィーーー!!!」」
「太陽のやぐらチビすぎ〜‥で、何が比例してるって??」


…やっぱり…あの笠松さんのありえない下品言葉に挑発されてというか、負けず嫌い精神で消防車呼んじゃうってすごいっていうレベル超えちゃってるような…ヒル魔さんだから許されるみたいな感じだよね、うん。


「…っていうかもしかして言葉の意味自体で負けたくなかった…とか…?」
「なんか言ったか?」
「あああええな、何もないです!何も!」
「…」
「な、なんですかその怪しむような目は?!」
「ケケケ、なんもねぇーよ」
「あ、そういえばなんでわたしを連れてきたんですか?」


わざわざ引きずってまで連れてきたわけだし、それにさっき「くっつく暇があるなら仕事しやがれー!」みたいなこと言ってたくらいだしなんかすることが「…別に」…はい?


「え?あの…ヒル魔、さん?」
「だから別に用はねぇっつってんだろが!それとも何か?用、なかったらテメェを連れてきちゃ行けねぇ法律でもあんのか?」
「えっ、いや、な、ないですけど…!別に用がなくったってヒル魔さんになら呼ばれても構わないですけど…」


…‥ってあれ?ちょっと待って、わたしいまなんて言った?用がなくったってヒル魔さんになら呼ばれても構わない、って…もしかしてわたしすごいこと言っちゃ、った?「…〜っ!あ、いや、そのだから、「さっさと糞マネんとこ行け」


「あ、え、」




「熱中症になんかなんじゃねぇーぞ、」




「…―、は、い―…」


ぽんぽんっとわたしの頭を撫でてくるりと振り返ってヒル魔さんは行ってしまった。…どうし、よう。顔が、熱い。きっとわたしいま、顔真っ赤だ。心臓がばくばく言ってうるさい。ヒル魔さんのきれいな手が、わたしの頭を撫でて、ヒル魔さんの声が初めて、わたしのことを“”って呼んでくれ、た。しかも体調の心配までしてくれた…―?『』ヒル魔さんがわたしを名前で呼んでくれた一言が、何度も、何度も頭の中でリフレインされる。―どうしよ、かあぁって顔が、ほんとに熱い、よ……気付いちゃっ、た。わたし、本気でヒル魔さんのこと…――




****




「ま、まもね…ぎゃあっ?!?!」
「!…って、ヒル魔くん!」
「ただでさえ暑苦しいーのにひっついてる暇があんならさっさと仕事しやがれ糞マネ共!」
「ちょっと…!」
「わ、わたしはだいじょぶだからーっ!」


ずるずる、気付けばいつのまにか俺はこの糞チビマネの首根っこを掴んで歩き出していた。…にしても、なんだこいつ。嘘みてぇに軽ぃ。簡単に引きずられてんじゃねぇよ糞バカ。暑いのか腕の根元までまくった腕から延びる腕も短パンから伸びる足も嘘みてぇに白ぇ…って俺は何考えてんだ?なにやってんだ?なんでこいつをわざわざ糞マネから引っ張って…「ぎゃっ?!」いつのまにか離しちまったせいで色気のない声が聞こえて現実に引き戻される。何もなかったように俺は携帯を出しあるところに電話をかけ一方的に用件をつげてきった。


「「なにィーーー!!!」」
「太陽のやぐらチビすぎ〜‥で、何が比例してるって??」


まもなくして俺の頼んだやつがくる。ケケケ何事にも負けるっつーのは気分よくねぇからなぁ?それに試合前に野郎共がこんなことでびびっちゃ元もこもねぇ。


「…っていうかもしかして言葉の意味自体で負けたくなかった…とか…?」
「なんか言ったか?」
「あああええな、何もないです!何も!」


あからさまに動揺してんじゃねぇか。こいつはほんとわかりやすい…と思いきや、時々俺でも何考えてるかよめねぇような表情をしやがる。…ほんとになんなんだ、こいつは。、女、1年、転校生、アメフト部マネージャー、…それだけだ、俺がしってるこいつの情報は。少なすぎる、俺の情報を持ってもこんなけしか情報が集まらねぇなんてこと今までなかった…こいつはほんとに、ここにいんのか?


「…」
「な、なんですかその怪しむような目は?!」
「ケケケ、なんもねぇーよ」
「あ、そういえばなんでわたしを連れてきたんですか?」


…そうだ、なんで俺はこいつをここに連れてきたんだ?別にここに連れてこなくたって良かった。用つったて一人で出来ることばっか。なのに、なんでだ?なんでだかこいつが糞ジジィと喋ってっときも、糞チビとふたりして笑いあってっときも、糞マネと抱き合ってっときも無性にイライラしてきて………って、そういう、ことかよ…、


「…別に」
「え?あの…ヒル魔、さん?」
「だから別に用はねぇっつってんだろが!それとも何か?用、なかったらテメェを連れてきちゃ行けねぇ法律でもあんのか?」


そうだ、俺としたことが情けねぇ。だからんなこいつのことが知りたくて、イライラすんのかよ。まただ、俺にそんなに近づいてほしくねぇのかって言いそうになっちまう。イライラがつのるばかりの自分にまた苛立ちを覚える。


「えっ、いや、な、ないですけど…!別に用がなくったってヒル魔さんになら呼ばれても構わないですけど…」
「!!」


なに、言ってんだこいつ?…俺にならってのは、俺だからいいのかよ?そう考えて、いいのかよ、…みるみる糞チビマネの顔が赤く染まるのが分かる。


「…〜っ!あ、いや、そのだから、「さっさと糞マネんとこ行け」
「あ、え、」




「熱中症になんかなんじゃねぇーぞ、」




「…―、は、いー…」


思わず引き寄せそうになって伸ばした腕を必死に理性を押さえて頭にのせてぽんぽんっと撫でてから振り返って歩き出す。…やべぇ、顔が熱ぃ。真っ赤に染めてその瞳に俺だけを映してあんなこと言うなんて、狙ってやがんのか?いや、んな訳ねぇ、どんだけ自惚れてんだよ俺。…でも、初めて名前を呼んではっきり気付いちまった。名前を呼ぶだけであんなに緊張して声が震えちまったんじゃないかと思った。あの言葉聞いた瞬間、顔を見た瞬間、思わずあいつを…を抱きしめてやりたくなった。…俺は、のことが本気で…――








((好き、なんだ…―))













(080715)