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The worst and the lowest strongest man
「負けっ放しは―趣味じゃねぇんだ!!」
がらがらがっしゃーんという音が聞こえてきそうなほどきっれーいに決まった不良殺法のおかげでピラミッドラインが崩れた!やったあ!!放課後懸命に練習したかいがあったなーって、ほんとに思う。
「いっけぇーっ!浩二庄三一輝ぃーーーっ!!」
はぁーっ!こんなけ叫ぶとある意味すっきりするなぁ…!っていうか…あれ?なんかみなさんの視線がこちらに…ってなんで??あ、もしかして大声叫ぶようには見えなかったのか、な…?ほんとはこっちが素なんだよーっ!「前半戦終了ーっ!」どきどきしながら応援を頑張ってる間に前半戦終了。わ、みんなにドリンク持ってかないと!
「すごいすごい!1点差!後半逆転がんばろ!!」
まも姉嬉しそうだなー…というか可愛いなぁまも姉…ってわたし変態かっ!!
「はいっ!せ‥じゃなくて、アイシールドくんっ!」
「わっ、!ありがと‥」
「調子はどう?」
「うん‥やっぱり楽しいよ、アメフト‥!」
「そっ、か‥いぃなぁー」
「へ?」
「わたしもやりたいな、アメフト」
「なっ?!何言って「なーんてねっ、」
ほんと。わたしも男で、栗田さんみたいに力があるか、セナみたいに走りが速かったらよかったのに、なー…そしたらみんなとアメフト、出来たのにな。ってマネできるだけでも嬉しいんだけどさ!なんかこう‥みんなが熱くなってアメフトやってるのみると、どうしても羨ましいなぁーって思っちゃう。…これって欲張りなのかな?やっぱし。「まもりさん!」ん?モン太がいきなりまも姉を…って、もしかして「必ず汚名挽回するっス!」
「(……!)う、うん がんばって!」
「おーカッコいい!」
…やっぱし。というかセナ納得しちゃだめじゃん!まも姉は優しいから黙ってるだけだけど…明らかセナは勘違いというか間違いに気付いてないよね…、
「汚名を挽回されちゃ困るな。汚名返上か名誉挽回じゃねーとな」
「いいでしょ!がんばってるんだから細かいことは!」
ヒル魔さんの的確なつっこみが入る。わたしも文系苦手だからひとのこと言えないけど…あ、ていうかヒル魔さんにドリン…「あ‥ヒル魔くん、はい、ドリンク」
「あぁ」
「それとあのさっきのやつのことなんだけど…―」
…クって遅かった、かー…遅かっただけじゃなくてヒル魔さんとまも姉のふたりでなにか作戦の難しい話はじめちゃった…‥頑張ってください、って言いたかったのに、なぁー…‥ってなにくよくよしてるんだばか!!ふたりは作戦会議で大変なんだもんっ、まも姉の分のマネの仕事わたしがしなくてだれがするんだ!
「はいはーいドリンクまだありますよーっ!」
「‥おい」
「あっ、一輝!ドリンク、いる?」
「あ、あぁ」
「ー俺らにはくれないのか?」
「もちろんいるなら?浩二に庄三っ!」
さんきゅ、といいながら3人がドリンクを受け取る。この3人も早く真のデビルバッツメンバーになってほしいな。そしたらほんとに絆の深い最強のラインマンができるのに…って、焦りは禁物、だよね。
「モーンー太ぁあーっ!!」
「キィーッ?!!」
バシッとヘコみオーラMAXのモン太の背中を叩いた…けどちょっとうまく入りすぎたみたい…!ぴょんぴょん飛んでモン太が痛がっちゃってます。
「ご、ごめんモン太…!」
「いったいいきなりなん「大丈夫だから!」
「…は、」
「モン太なら、大丈夫だから。自分を、みんなを信じて」
真っ直ぐモン太の視線とぶつかる。目が丸くなっていた目がぎっと鋭さを増して強みを帯びた目線、に変わった。…そう、その視線があれば大丈夫だよ、モン太。
「汚名返上名誉挽回〜…」
「「MAーーーXっ!!」」
***
「よーし太陽はキックも成功!」
後半戦開始後、鎌車が入ったことによってさっきまで優勢だった後衛が4―6‥いや、5分くらいになっちゃっ、た…。そしてすんなり決まったてしまったキック。…キックかぁ、…キックの差は無さそうにみえてやっぱし重要なんですよ、わかってますよね、厳さん…―。
「うちはキック入んないから、同じタッチダウン数だと負けちゃうんですね…」
「……!そっか…わかった。泥門が攻撃型な理由」
「?」
「ヒル魔さんの…好みでしょ?」
「違うよ、セナ…」
「…え、?…?」
「泥門は…低得点ゲームだと、キック差で負けちゃうんだよ、」
「キッ、ク…?」
「うん、キックだけって言ったって、フォースダウンでキックを使うのはもちろんトライフォーポイントだってあるでしょ?」
「あ…だからその点差がどうしても…?」
「そう、でも‥点の取り合いならキックの点差をタッチダウンの数でカバーできる、の」
「…確かに!」
わたしのことばにみんなが驚きながらも、確かに…という顔をしてる。そうだよ、そんな趣味とか好みなんかであのヒル魔さんが勝負するなんて、あるわけないんだよ。ずっと、ずっと、あの、「…厳さんがいなくなった時から…」
「え、いまなんて…」
「えっ!いや、なんもないよっ」
「ムサシ君がいなくなったあの時から攻撃型にするしかなかったんだね…」
「攻めて攻めて攻めるぞ。一回斬られた二回斬る!」
「う、うん!」
「俺らには…―それしかねえんだ」
ヒル魔さんのことばが、やけに胸に突き刺さった。いま、もしわたしがこの先のことを言ったとしたら、どうなるんだろう。ほんとは‥ほんとはいますぐにでも先のことを話してみんなを、ヒル魔さんを楽にしてあげたいし安心させてあげたい、けど…それはすべきことじゃないってわかってる。そんなのはきっとわたしの、ひとりよがりでしか、ない……でも、それじゃあわたしは、何ができるん、だろ…?…ある、みんなを守ること、みんなの応援をすること、それがいまのわたしにできる精一杯のことだ…!すーっと息を肺の奥ふかぁーくまで吸い込んでっ!
「あぁーーーっ!!」
「「「?!!!」」」
「いっっけぇええーーーっ!!泥門デビルバァアアアアーーーッツ!!!!」
「…」
「…っし!ぜってー勝つ!!」
みんな、頑張れっ…―!!!
***
「試合終了ー!!」
ピィィィィィと笛の音と、さっきヒル魔さんが同点タッチダウンが決まったときに消防車放った大量の水のおかげできれいな虹が見えた。よかった…って言っていいのかわからないけど、結果はわたしの知っていた通りの引き分け!
「引き分けは…喜んでいいんですよね?」
「当たり前でしょ!こんな強いチームに引き分けたんだから!」
「「「やったぁあああーっ!!!」」」
「バカみてーに喜ぶな!引き分けなんざ負けと大して変わりゃしねえ」
「そんなこと、ないですよっ!!」
「…あ?」
「…太陽スフィンクスに同点なんて、さすが天才悪魔のQBの力…って感じですかね?」
「…ケケケ、お世辞がうまいこった」
「お世辞なんかじゃないですよ!」
「…じゃあなんだよ」
「…本心、です。…わたし、の…お疲れ様、でした、」
胸がなんだか急に一杯になってきちゃった…。ことばもつっかえつっかえになっちゃったし、ちゃんとヒル魔さんに気持ち伝えたかったのに……―え、
「ヒル魔、さん‥?」
「…お疲れ」
ぽんぽん、厳さんとはまた違った、でも男のひとらしい手がわたしの頭を撫でる。ふっと一瞬だけだけど、ヒル魔さん…笑っ、た?…止めてくださいよ、不意打ちなんて卑怯ですよ。心臓がばくばく壊れたみたいに、うるさい。
「泥門デビルバァッツ!日本代表決定ーーーー!!」
「オオオーン!!」
いつのまにヒル魔さんあんなとこに‥!というかわたしがぼーっとしてただけなのかな…?!ケルベロスもヒル魔さんの後に続いて雄叫びをあげて、なんだかうれしそう。よかった、ほんと……―ちがう、いや‥違わないんだけど、なにかが違うというか…なんだろ?この、胸がざわつくような‥イヤな予感が、する。なにか忘れて…――!!そう、だ、わかった、「うちも江ノ島行くよ」まも姉の声が聞こえる。江ノ島フットボールフィールド、春季関東大会準決勝、時事実上の決勝戦…―王城VS神龍寺…!!…そして、この胸騒ぎの原因も、わかった。やばい…っ!急がなきゃ、じゃないと…!!
「まも姉っ!」
「ん?どうかした?」
「ごめんっ!江ノ島先行ってて!!」
「あぁ?テメェ行き方なんて知らねぇは「わたしなら大丈夫ですから!!じゃあっ、」
「ちょ、…っ―」
まも姉がわたしを呼び止める声がしたけど知らないふりをしてそのまま一直線に校門の外へ走り出す。はやくっ、行ってしまうまえに…!―…ルイさんの、もとへ…!!―
***
ドルルルル…―相変わらずこのバイクのおっきい音は変わんないなぁ…、…いや音だけじゃかった。スピードと怖さもだ…!!(つまりは相変わらず怖いよこれ…!!)ありえないスピードで走るルイさんのバイクの後ろに乗っけてもらい、いざ江ノ島までー!
「ルイさんっ!」
「あぁ?んだよ」
「いっ、きなりすみませぇーんっ!!」
「…カッ、別にこれくらい構わねぇよ!」
なんとも男らしいルイさんの返事にそっと胸をなで下ろす…けど、そんな油断してられ、ない。わたしはこの後の惨事を阻止するため…それが無理でも、せめて最小の被害で抑えられるように…、!!!
「きゃっ、ルイさっ…!危ないっ!!」
「!!!」
ギキキキキーッ!!耳を思わず塞ぎたくなるようなブレーキの音。思わず体がルイさんにぶつかる。ゆっくり顔をあげたら、……派手な柄のTシャツに、ジーパン。長身に特徴のある…ドレッド…―心臓が掴まれたように苦しい。ヒル魔さんの時とは違って、怖い、逃げ出したくて、たまらない。恐怖が体を支配する。
「ちっ、誰だ?!!」
「!!ちょっ、だめ!!止めてくださいルイさんっ!!!」
「カッ危ねーなバカ!!」
「やめてルイさんっ…!!」
「死ね!!」
ぴたり、その男が止まった。―…危ないっ!そう思ったときにはバイクから降りて、どうにか男の動きを止めようと足掻いていた。バイクの前に立つ、と、‥ただならぬ殺気。冷や汗が止まらない。
「あぁ?」
「このひとたち、には‥手を出さないでください、」
「!!っ!!お前なにやって…「ルイさんたちは早く行ってください!!」
「?!テメェなにばかなこと言って―「だぁーれが行っていいなんつった?」
「ーっ!!!!」
一瞬、信じられない。自分の身に何が起こったのかも。ルイさんに話しをするために後ろを向いたほんの一瞬、気付けば目の前に派手な柄のTシャツを着た男がいて、わたしの体は地面を擦っていた。
「ーっきゃっ…!!」
「っ!!ーっくっそこのやろ…っ!!」
「!!ルイさんやめっ…!!!」
―ドゴッバキッ―
わたしが体を起こしたそのときにはもう、「るい…さん…?」さっきまで笑っていたみなさんが血だらけになって倒れていて、。ほんとに、何もかもがほんの一瞬、数秒で状況が一変してしまった。
「‥るい、さっん、ねぇ、るいさん‥ルイさんっっ!!」
体が痛い、どこが痛いのかよくわからない。でもどうにかルイさんのもとまでいく。だめだ、意識が、ない…‥
「誰か‥だれかっ!救急車を呼んでくださ…っ?!!」
体が急に浮いて…!!…無理矢理、わたしを立たしてなにがしたいんですか、
「…金剛‥阿含…っ!!」
「あ?俺の名前、知ってんのか」
俺って有名人?と言いながらけたけた笑うこのドレッドを力の限り殴ってやりたい。ほんとに、最悪最低だ。殴りたいのに殴らない、殴りたいのに殴れない、どちらもある。抵抗しようとしても、このわたしの腕を掴んでいる手の強さでどれほど相手が強いのか、喧嘩をしたことのないわたしでもわかる。ぐいぐい腕を引っ張られる。やめて、離してよ。
「…どこ行く予定だったんだ?」
「…」
「聞こえてんのかよ、」
「…つぅっ、やめっ、痛いっ」
「じゃあ答えろ」
「えのしまっ、フット、ボール…っ!」
「あぁ?んだよ、俺と同じじゃねぇーかよ…」
チッという舌打ち。わたしが質問に答えなかったら容赦なく手に力をいれてきたそのところが、ほんとうに折れるかとおもっ、た…。ぎしぎし骨が軋むような音がして、一瞬呼吸さえ、できなかった…。怖い、逃げ出したい、離して、助けて、…ヒル魔さんっ…―!!
(恐怖の境地で思い浮かぶのは、頼りになる愛しいあの人の顔)
(080719)