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little girl who became the favorite






ずるずる、ドレッドのいかつい男が血がついて怪我をしてる女の腕を引っ張って歩いている姿はまさに異常‥というか誰か警察に通報してくれない、かな。というかもうすぐ、到着だよね‥いつまでこの状態なんだろうか。わたしは、あなたの女でも犬でも奴隷でないんですよ。いきなり、すっと金剛阿含の動きが遅くなり、目線がある一点を捉えているのをたどる、と…‥


「あ、あの女」
「…っ!まもね…っ!」


なんでこんなところに…?!って、そうだ!確かセナがヒル魔さんにアイシールドに着替えるように言われて、それでまも姉に言い訳で生徒手帳探しに行くっていったらまも姉も来ちゃったんだ…!それで、阿含にあっちゃっ、て…いけない、忘れてた…っ!!


「ー…っ、」
「…あぁ?んだよ」


気付いたら無意識に阿含の服を引っ張ってて、だけどどんな対策があるわけでも、ない、けど…黙ってこの場をやり過ごすには無理がありすぎ、る、


「…またナンパですか?」
「…“また”ってお前なにを証拠に言ってやがんの?つーかお前…「やめてください」
「…は?」
「わたしだけ、見てればいいじゃないですか」


…なに言ってんだわたし。っていうか気を向かせるためだけどこんなこと嘘でもこの糞ドレッドに言うなんて気持ち悪すぎる。やば‥寒気がするんですけど…!他になにかことばなかったのか自分…?!


「…あー?なに?嫉妬かぁ?」
「さ、ぁ?それは金剛さんがよくわかって「ヤメロ」
「…へ、」
「さっきから敬語とかさん付けだとか…うぜぇ。敬語やめて呼び捨てにしろ」
「…は?」


あまりにも以外なことばすぎて情けない声が漏れて、ちょっと自分でも恥ずかしいんですけど…!…余程間抜け面だったのかもしれないけどツボにハマったみたいに笑わないでくださいよ金剛阿含め…。


「…金剛さ「阿含」
「…」
「…その2つが出来ねぇっつーなら…」
「?!」


がんっと音がしたと思ったら目の前に金剛阿含の顔がさっきよりも大きく見える。橋の手すりというか、柵に押し付けられた状況で、わたしの両脇に手を置いてわたしを逃がさないように、してる。戸惑うわたしをみてニヤリと金剛阿含がわらった、…なにこれっていうか周りの視線が「…、?」


「ーっ、セ…っ!」
「あぁ?知り合いか?」
「…っ、違いま…ひゃっ?!!」
「敬語やめろっつってんだろ」


なななな、な、何してんだこの男!!い、いま首筋な、舐められ、たってか噛まれた…?!っていうかセナと一緒にまも姉も気付いたみたいで、「!」とを呼ぶまも姉の声が聞こえた。まも姉…なんか焦ったような怒ったような顔してる…?


「んだよ…あの女と知り合いなのかよ」
「だから違いますっ…っぅあっ?!ちょっ?!なにして、やめてくださっ「ちょっと何してるんですか?!!やめてください!!」


ばっと黒い何かがわたしと金剛阿含の前に現れて…って「まもね…っ!?」


「くっ、やっぱ知り合いなんじゃねぇーか、」
「?!!な、んでなまえ…っ!」
「こいつらがさっき言ってたじゃねぇか」


…くそ、聞かれてたのか…そんなこと今はどっちでもいい、とりあえずいまは…ーと思ったら、さっきの何倍ものスピードで金剛阿含の後ろをなにかが…


「!!??」
「!!セナっ!」


セナが素速い速さで金剛阿含の後ろに回った…のに、それを上回るんじゃないかってはやさで、気付けば金剛阿含は後ろの橋の柵に座って、。なんて、速さ…っ!


「まも姉、わたしなら大丈夫だから、生徒手帳探しにきたんで…っつ!!」
「?!どっか痛い?大丈夫?!」
「だ、だいじょぶ、」


そうだ、生徒手帳探しにきたなんてわたしが知ってたらおかしいじゃん…っ!いきなり左腕に走った激痛に思わず顔が歪んだ。っていうかほんと容赦ないな…!めっちゃ痛いんですけど…!!


「いやーごめんごめん!ちょっと話がすれ違っちゃって」


金剛阿含が笑いをひっつけたような顔でこっちにくる。っていうか話しすれ違ってないでしょ。


「そういえば…君の捜し物ってこれじゃない?」
「「!!!」」
「あーあった!あったよセナ!!」


いつのまに、なんて質問はバカバカしい。それでもその一瞬でセナのポケットから生徒手帳を抜き出し、あたかも俺が拾いましたーみたいな顔をしてわたすそのいろんな技術には目を見張る…なぁ…。


「!!っ?!」
「へ、?」
「その血と傷…っ!」


まも姉は金剛阿含に騙されてるのかなにか話してる様子。そんな中、セナが驚いたようにわたしを見て、金剛阿含の鞄からはみ出た血のついた服とわたしを見比べる。…まず、セナって勘がいいというかなんというか、っていうかまたすり傷作っちゃった、な。まも姉は急いでたというか、さっきはわたしの目の前に立ってたし金剛阿含からわたしを護ってくれるのに必死みたいで気付いてなかったけど‥ばれるのは時間の問題、ってか。


「大丈夫、だから。心配、しないで?」
「でもその血…」
「この血は…―」


この血は、ルイさんの、だ。わたしの血もあるかもしれないけど、多分ほとんどがルイさんを揺らして抱き上げたときについた血、だ、…ルイさん、大丈夫だったのかな、わたしが、わたしがもっと…―


「っきゃっ?!?!」
「ほら、行くよ」
「?!あ、ごんさっ?!」


なんで金剛阿含がわたしの手をひいて歩きだしてるんですか?!意味がわからないっていうか状況が読めないんですけど…!!セナとまも姉は…後ろからふたりできてる、みたい。…なんでわたしだけ「お前は俺と行くんだよ」


「…なんでです「敬語」
「年上にタメ口なんて使えません」
「あのまもりちゃんとかいう女はどうなんだよ?」
「まも姉は…ほんとのお姉ちゃん、みたいな関係でって約束しましたから…」
「じゃあ俺も「無理です。それとこれとじゃあ話が天と地も違うんです」


ふんっ…てなんですか。そんな面白くなさそうな顔されたって駄目なものは駄目なんですよ、金剛「阿含」


「…え」
「せめて名前ぐれぇ呼べるだろうが」


なんでそう呼び捨てにこだわるのかな…


「‥わかりました、…阿含さん」
「さんいらねぇ」
「……阿含、」
「くくっ、やればできるじゃねぇか、泥門デビルバッツマネのチャン?」
「―…っ!!!なん、で」


って聞かなくてもわかる。まも姉がいったんだ、…まも姉…完璧に騙されてるよ、このひとに。いつの間にかすたすたと歩いていると気付けばもう会場についていた。…っていうかいい加減離してほしいんですけど、そのわたしの腕を掴んで引っ張ってる手を。


「チッ…もう着いちまいやがった」
「わたしは嬉しいですけど…」
「あぁ?なんか言ったか?」
「…イイエ、ナニモ」


そう言いながら降参とでもいうように両手を小さくあげる。「チッ」…ってなんでいちいち舌打ちするかなぁ!てか舌打ちしたいのはこっちだから!!全く…って「わっ?!?!」ぐいっと引っ張られてタバコと香水の匂いに包まれて、阿含に抱きしめられてることに気がついた。


「っちょっ!!…阿含なにして「やっと普通に呼んだな」
「は?!」
「俺の、名前、」
「なっ…!もっ、ばかっ!ですかっ?!」


ばんっと胸板を押して離れる。意外と、ちゃんと筋肉ついてるんだ‥じゃなくて!そんなに笑ってる意味がわからないんですが!!


「くくくっ‥んとに面白ぇ、気に入った」
「き、気に入らないでください!」
「やーだね」
「っ!!もういいで…えっ、」


なんの無駄もない、ごく、ごくふつうなような動作で腕を引っ張られる……チュッ……ちゅっ?何の音?んでもっておでこに柔らかい感触、ってもしかして、というかもしかしなくて、も


「いまはこれで勘弁しといてやる」


ヒラヒラ、手を振りながらさっていく阿含。というか、まぎれもなくあの音と感触は、いわいるでこちゅーをされたわけで、っていうか“いまは”ってどういう、こと?ま、まさか…


「わたしほんとに…気に入られ、た?」


阿含が小さくなってやっと見えなくなった…わたしもみんなのとこ行かなきゃ、


「って、あれ?えっ、なっ、きゃっ」


安心して腰抜けたプラスなんか足に力が入らない…っ!てか尻餅ついちゃうよ痛いよ…っ!!って体がまた急に持ち上げられて…?!


「ぅわあっ?!」
「おいっ、」


どき、一瞬にして心臓がばくばくと動き出す。うるさい、心臓。外に聞こえてんじゃないかっていうのが心配てならない。というか、さっきの声、は、「ひっ」


「ひるま、さ、」
「…なにしてんだよ…、?!っておまえ、」
「や、あの、これは、」


そのまえにとりあえず、とやんわりわたしを支えてくれている腕から抜け出す。


「ーっ、きゃっ」
「ばっ…!無理すんな」


またもや助けられました。なんでだろ…?!どうしても右足に力が入らない→立てない。みたいな状況になっちゃってる…!…というか助けがないと立ってられないのは確かなんですけどヒル魔さんに支えられてるとなると心臓うるさいしどきどきするし服の血とかまたけがとか見つけられそうだとかいろいろ危ないんだけど…!


「ひぎゃっ…?!ってな、なにしっ」
「黙ってろ」
「な、なな、なにし…っ!じじ自分で歩けますから下ろしてくださ「嘘付け。自力で立てもできねぇやつが歩けるわけねぇだろうが」


だからって急に軽々お姫様だっこして歩き出すなんて……ほんと反則ですよ、ヒル魔さん。どんどん好きに、…なっちゃうじゃ、ないですか…―。


「!!っ!!!」
「っ!大丈夫…ってど、どうしたのその、ち、血…っ」
「あ、大丈夫だから、気にしない「訳ないでしょう?!」
「あ、うん、そうよね、うん、」
「もう…ひとりで行けるっていうから行かしたのに…、」
「わわっ!まも姉泣かないでっ!!わたしならほんとだいじょ…っ?!!」
「これのどーこが一体どう大丈夫なんだよ」


ヒル魔さんがわたしの足元にしゃがみこんでなにかしてるなー‥と思ったら座ってるわたしの力の入らない右足を検査してくれてた。っていうか痛い痛いいたいーっ!!


「‥っ、つぅ、っ…」
「…痛いなら言え」
「…だいじょ、ぶで…っ!!」
「…ほんとか」
「…すこ、し、痛い、です…っ!」


素直に言ったら、きっと優しいみんなが心配してしまうだろうから、言わない。それでも、多分ヒル魔さんにはばれてしまってるだろうけど。


「試合終了ー!!」
「負けちゃった……」
「あの王城が…」


気付けば試合終了のホイッスル。やっぱり…セナと栗田さんは王城が負けたことに、相当驚いてるみたい…。そりゃそうか、最強の王城だもんね…。


「おい、糞マネ、包帯かせ」
「あ、うん、ちょっと待って」
「!あ、のわたしならほんともう「見とれ神龍寺!!」
「?!と、虎吉?」
「!!」
「今日のは桜庭が病み上がりだからや!秋には余裕で倒したるわアホー!!」


わたしのことばを遮るほどの大声、誰かと思えば虎吉くんで。声が向かう先にはもちろん―…阿含、が、…―


「ー…っ!!!」



ガタッ!



「?!ちょっ、どこ行…」
「神龍寺のアホー!ヘタレー!!」
「虎吉くん…っ!!」
「え……?」


阿含が投げたボールが迷うことなく虎吉くんに向かう。どうか虎吉くんには当たらないで…!!しばらくたって「ムキャー」とモン太の怒る声が聞こえる。よか、ったぁ…どうにか間に合った、みたい‥。


「…?」


上から虎吉くんの声が聞こえて、顔をあげる。なんて、不安そうな顔というか、つらそうな顔。なんで、そんな顔してるの…虎吉くん…


「虎吉、くん…けが、してない?」
「あ、あぁ、俺は大丈夫、やけど、」
「なら、よかっ…た…‥」
「…?なっ、ちょ、っ!っ!!」



虎吉くんがわたしの名前をなんども必死に呼ぶ声は、わたしの耳には届かなかった。








(あなたが無事ならわたしはどうなってもいい)













(080722)