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The truth is unlaced






―…ピチチ……―


ん、また、だ…鳥のさえずりが聞こえる…ってあれ?わたし確か、江ノ島フットボールにいたはず…じゃあここ、は?


「!!、目、覚めたか?」


ゆっくり瞼を開けると、そこには真っ白な天井と、見慣れた様なまだ少し見慣れないような髭を生やした老けた面が…(‥ってわたし大分失礼…)


「俺が誰だかわかるか?」
「…‥厳、さん‥」


はぁ、と厳さんが安心したようなため息をつくのが聞こえた。‥安心?というか、この見慣れない天井は…いったい、


「ここがどこだかわかるか…?」


わたしの考えを察したみたいなことば…ってあんなけきょろきょろしてたらそりゃわかるか…ふるふる、とゆっくり首を横に振る。はぁ…こんどは呆れたため息、だ


「病院、だ」
「…へ、」
「お前運ばれたんだよ、ここに」


どうしてですか、って聞こうとして止めた。…そうだ、わたし虎吉くんを阿含の球から庇ったあと、急に意識が遠のいちゃって…意識、失っちゃってたんだ、わたし。


「…なんにち、ですか」
「丸3日」
「…う、そ…」


こんなとこで嘘言ってどうする、という厳さんのことば。‥確かに。というかわたし丸3日も意識失っちゃってたの…?!ていうか寝てた、って方が近いのかな。


「ちょっと待ってろ」
「あっ、待ってくだ…いっ…?!」
「ばっ!、バカ野郎!」


起き上がろうとした瞬間、体の至る所(主にお腹あたり)に激痛が…!途中まで体は起こせたものの、そっから起きれなくて慌てて厳さんが支えてくれた。なんだなんだ…?!このわたしが眠ってた3日間でわたしのからだに何が起こったんだ…?!!…じゃあもしかして……わお、やっぱし。足もきっれーに包帯がきっちり巻かれてます。ギプスとかしてないとこを見ると骨に異常はなかったんだ、よね…よかった…っていうか実際足をどこで怪我したのはわかんないんだけど(多分阿含に殴りとばされて着地したとき捻ったのかな…?)ひとついえることは阿含に殴り飛ばされたときの怪我が一番酷い気がする。いや…番場さんのも大概だったけど阿含はもろコンクリートだったからね…あれは正直痛かっ‥


バタンッッ!!!


「っ!!?」
「まっ、まも姉っ?!」


悶々とひとり考え事をしていると急に扉が開いた。ほ、ほんとびっくりした…!というかよく見てみたら「えっ、み、みんな…いる…?」


「そうだよ!みんなでのお見舞いにきたんだ!」
「早く復活MAーーーX!してもらわねぇとな!!」
「セ、ナ…モン太‥」
「無理しちゃだめだよっ!!」
「ふ、復活ふごー!」
「焦らずゆっくり元気になってくださいね」
「栗田さん‥大吉…雪さん…っ」


みんな、わたしがバカやってしたケガなのになにも言わずお見舞いにきてくれるなんて。いつの間にみんなに連絡してたんですか、厳さん。


「おい、」
「あ‥一輝」
「は、早く…元気になれよ」
「え?」
「だから…っ!お前がいねぇーと調子狂うんだよっ!!」
「!!かず、き‥」
「そうそう、遊べるやつがいなくて暇で暇で」
「浩二…」
「ジャンプの話しできるやつもいねぇーしな」
「庄三…、」


やばい、嬉しくて、たまらなく嬉しくて、鼻の奥がつんとして目がじわりと熱をもつ。…泣いちゃ、だめ。今は泣くべきときなんかじゃない。えがおで‥笑顔で、言うべき、だ「みんな…」


「ありがとっ!!」


そういうとほっとしたようにみんなも笑ってくれた。‥ってあれ?なんか足りないというか‥厳さんがどっかに行ったのはさっき見えたんだけど(多分ここに“大工のおっちゃん”がいたらなんで?ってなるだろうから)


「‥あ、!」
「?どうしたの?」
「あの、さ…ヒル魔さんは?」


そうだ、何か足りないなーなんて言いながら目はずっと探してたじゃん。薄情ものめ。


「あ、ヒル魔さん…」
「そうよ!ヒル魔くんったら『俺は行かねぇ』の一点張りで…ほんとにひどい!!」
「え…」


ずきずきずき、心臓が痛い。息が苦しい。なんで、ヒル魔さんきてくれなかったのかな‥?もしかして、そんなバカばっかりやるマネなんか奴隷にもなんねぇって、思われちゃったの、かな…?わたし、ヒル魔さんに、(捨てられ、ちゃった…ー?)


「ー…っ、」
「…??」
「なっ、でもな…い…」
「もしかして調子悪い?じゃあ私達そろそろ帰りましょうか」
「そ、そうだね!」


気を使ってくれたまも姉の一言で一輝や浩二みんなが「じゃあな」「大人しくしてろよ」と口々に言ってから出て行く。わたしはにへらと笑って手を降って見送った。


「…じゃ、セナ、頼んだわよ?」
「う、うん!任せて」
「じゃあね、。無茶したゃだめよ?」
「うん、わかってるばまも姉。ヒル魔さんにも相変わらずバカみたいに元気でしたぁー!って言っといて!」
「ふふ、もー‥ったら。じゃあね?」


そう言って最後にまも姉も出て行っちゃった…。って、


「なんでセナだけいるの?!」
「あ、僕はの子守っていうか」
「わたしは幼稚園児か」
「いやっそう意味じゃなくて「“世話係”?」
「あ!そうそれ!」


まったくそんなの誰が決めたんだか…多分まも姉なんだろうけど‥ほんと心配性、じゃなくて優しいっていうか。じゃああのとき厳さんはこのこと知ってて帰った、のかな?ー…ってことはセナとふたりっきり…、「…セ、ナ」


「ん?どうかした?」
「…この間の話し…」
「えっ?」
「教室で、わたしがセナに話そうとして…」
「あ、うん。それがどうかした?」
「…いま、聞いてくれる?」
「…え、」


とまどうセナ。きっとまたわたしが原因不明で倒れちゃうんじゃないかなとか、また泣かせちゃうんじゃないかなとか、心配してる。


「でも、…」
「わたしが、わたしが話したいの」


「―…セナ、に」


真剣な目でセナの目を見る。かちかちいう時計の音がやけに大きく聞こえた。ごくり、セナが唾を飲む音も。「…わかった、…教え、て?」こくり、頷く。どくどく心臓が暴れ出した。怖いとか不安だとか、そんなの大丈夫。セナならきっと、受け止めてくれる、から。


「あのね…」



だから、すべてを話そう。わたしの、秘密を





「わたしは、この世界の人間じゃない」





「―…え、」
「正確に言えば…多分わたしは、もう生きては「だから死んじゃいねぇっつってんでしょ?」
「「?!!」」
「じ…っ仁?!!」
「あ、なたは、確かの…お兄、さん…?」


気付けば窓の縁に腰掛けている仁がいた。(大人バージョン)いつのまに入ってきたんですか…


「さっきのまだよ」
「‥じぃーんー?」


またひとの心をかってにほいほい読みやがって!神様の手下てか候補とかなんとかいうならプライバシーの保護くらいちゃんとやってくださいよ、まったく…。…って話しがそれた。


「…なんでここに仁がいるの?」
「“証明役”だよ」
「…え?」
「そこの少年に話すんだろ?全部」


…やっぱし仁にはなんでもお見通しってわけ、か…。でも‥うん、そうだよね。ちゃんとした証明があったほうが信じられるだろうし(と言ってもなんもしなかったら仁も普通のひとにしか見えないんだけどなー…)わたしにとってありがたいことこの上ないのは確かなんだけどね、「…あと‥」


「盗み聞きはよくないぜ?大工のおっちゃん」
「「…え、」」


仁…?扉に向かって言ってるみたいだけど…大工のおっちゃんって、まさか


…ガラガラ


「…げ、厳さん?!」
「大工のおっちゃん?!」
「…そんなつもりはなかったんだが‥悪いな、」


びっくりした…!!厳さんもう帰ったと思ったら違うかったんだ…!それもそっか、厳さんが挨拶もなしに黙ってこっそり帰るはずもない、よね…。まるで図ったみたい…ってまさか仁が…?


「い、いえ丁度よかった、です。」
「何か…大切な話じゃなかったのか?」
「はい…だからこそ‥厳さんにも聞いていただきたいんです」


そう言うとセナと厳さんの「…え」と漏らした声が重なったのが聞こえた。仁からは驚きの声はまったく聞こえない…ということは、やっぱりわかってたんだね、仁は。


「…俺なんかが聞いていいのか?」
「“俺なんか”に聞いていただきたいんです」


すこし笑っていうと、優しい微笑みが返ってきて頭をぐしゃりとされる感覚がした。…おっけー、ってことみたい。すー、と息を吸い込む。…なに震えちゃってるんだ自分。怖がることなんて、なにもないんだから。意を決して少しずつ話しだす。ふたりは本当に真剣にわたしのことばに耳を傾けてくれて、いる。


「…さっき言ったとおり、わたしはこの世界の人間じゃありません。いわゆる別世界からここに連れてこられました。…このひとに」
「えっ、じゃあそのひとはお兄さんじゃ…」
「うん、違うの。このひとは」


ちらりと仁に視線を送る。するとさすがわたしがなにを言いたいのかわかったらしくはぁ、と短くため息を吐き出してから口を開いた。


「…時期神様候補。いまはそれなりの地位についてる」
「かみ、さま…?」
「そ、神様。」


セナが驚いたように声をもらす。そりゃ誰だって驚くよねー…こんな若いいけめんの兄ちゃんがいきなり『時期神様候補ですー』なんて言い出すんだから。(まぁ事実なんだけどさ)


「証拠になるもんが欲しいか?」
「え…」
「小早川瀬那。身長155、体重48、血液型A、誕生日12月21日、年齢15、40ヤード走4秒2、ベンチプレス45、ポジションはRBとS、特技変身、弱点パワー不足、そして‥アイシールド21の正体」
「!!な、」


仁相変わらずだな‥セナはびっくりしすぎてことばも出てないし厳さんは…あれ?厳さんなんかぼーっとして、る?ちらり、仁の視線がセナから厳さんに移される。まさか仁厳さんの情報まで…っ?!セナがいるからそれはだめっ!


「ちょ、待ってじ‥?!」
「黙ってなさい理数」
「?!!」


仁の手で口抑えられて喋れない‥!!ってなんかしたな仁!抵抗がまったくできない‥!!


「武蔵厳、身長177、体重77、血液型A、誕生日4月2日、年齢17、40ヤード走5秒6、ベンチプレス90、ポジションK、LB、特技、大工仕事、弱点年下の女…んでもってただいま泥門高校アメフト部1年が必死になって探そうとしている伝説の“60ヤードマグナム”のキッカー、ムサシ」


ぽかん、というか呆気にとられている厳さん。そりゃここまで言われたら言葉もでないよね…ってセナもさっきの厳さんみたいになにかぼーっと…もしかして、


「セナ‥セナっ?」
「あ、、あれ?」
「セナ…さっきのげん‥大工のおっちゃんの話聞いてた?」
「それが‥よくわかんないんだけど、さっきそのときだけどこか別のとこにいたみたいな感覚で…まったく聞こえなかったんだ」


首を傾げるセナ。だからぼーっとしてて我ここにあらずってかんじだったんだな…。厳さんのほうにも視線をやるとこくり、と深くゆっくり頷いた。…やっぱり


「んなヘマ俺がするか」
「だよねー…」


はぁ、とため息をついた仁。んなあからさまにあきれなくても…!!


「これで信じてもらえたっしょ?」


じゃあ、話なよ、。その仁の言葉になんでいまこういう状況になったのかを思い出した。そうだ、わたしのせいでこんなことになっちゃったんじゃないか。…よし、なにも心配することは、ない。真実を伝えればいいだけ


「…わたしがいた世界に、セナたちのことが書いてるものがあって‥とりあえずわたしは、」
「は‥?」
「みんなの‥泥門デビルバッツの未来を知ってる」
「「?!!!」」
「ある程度までだけど‥それでも結構あるのわ、ある。」
「もしかして‥、十文字くんたちのときもこの間も誰かを庇おうとして…?!」
「…」
「そうなのか、」
「…(こく、り)」


ゆっくりとぎこちなく頷く。セナ、勘がいいんだもん…。というかよすぎる、よ。でもわたしは、なにも変われてないんだ。なに、ひとつ。


「‥結局わたしはなにも出来なかった。いまも、…―昔も」
「昔…、も?」
「わたしは…ー」





「わたしは、自分の両親を殺めた、の」








(悲しい過去、つらい現実)













(080825)