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Circumstances explanation






「これが…わたしのすべての秘密。」


全てを話終えて顔をあげると、目を見開いたままぼろぼろと涙を零すセナと、唇を噛みしめ、苦しそうに眉間に皺をよせた厳さんが見えた。まったくセナったら…男の子なんだから、厳さんみたいにしっかりしなきゃ!


「…今度はセナを泣かしちゃった…ね、」
「、、…っ」
「…わたしは‥親殺しのむす「違う」
「…セナ‥」
「違う、の、せいなんかじゃない」
「わたしのせいなの」
「違う、」
「‥そう」
「違「そうなのっ!!」
「「!!」」
「わたしが‥わたしがあの日遊園地に行きたいなんて言わなかったら!‥っ、お父様もお母様もじいやもみんな死なずにすんだのに…っ!!」


わがままを言った自分が許せない。あの日、雨のことを一番目に見てわかってたのに何もしなかった自分が憎い。全てを、なにもかもを壊した自分を消し去ってしまいたい…―なんども、なんどもそう、思った。


「お父様たちも…わたしなんか庇っちゃって、なにしてたのよ」
「っ!!!!」
「自分たちが、互いが一番愛し合ってたならわたしなんか庇わずお互いを庇いあったらよかったのに!!…わざわざわたしのとこへ飛びついて庇わなくても‥よかった、のに」
「それは‥「うそ」
「‥へ」
「わたしは、わたしが許せないだけなの…だから、みんなの未来を知ってるから、みんなを守りたい。」


話しが支離滅裂だ、ばか。要するにきっとわたしは、償いたいだけなんだ。誰かに。逃げてるんだ。弱い、自分から。許せない、過去の自分から。


「…っ、ごめんなさいっ!2人ともっ!もう…暗い話はしない…わたしは、笑顔でこそだもんねっ!!」
「…」


笑顔でそういうと、頭にぐしゃりという懐かしいわたしの好きな頭を撫でられる感覚がして顔をあげると、厳さんが優しい顔でわたしを見下ろして、た。


「…無理はすんなよ」
「…はい」
「何かあったら俺に吐き出すこと、わかったか?」
「…はい、ありがとうございます…」


さっきの辛い自分が嘘みたいに、自然と笑顔になる…、厳さんはほんとあったかい。


「ぼ、僕にも隠し事はなしだからね!っ!!」
「セナ…」
「ほらっ、わかった?」
「…うんっ!りょーかいっ!…ありがとうっ、ふたりとも!!」


自然と笑顔になってふたりもにっこり笑う。セナも泣き止んだみたいでよかった…目が赤いからまも姉に心配されそうで怖いなぁ…。ま、セナなら大丈夫か…って、「…あ、れ‥?」


「……?どうかした?」
「‥なんだか急に、眠たく‥なっ、て…」


あれれれれ?ま、瞼がハンパなく重いぞ…?!もしかして、ほんとのことを2人に話せたから安心し…て…?だめだ‥意識が遠のいて、く……




*********




「ほ、ほんとに寝ちゃった…?…」
「俺が強制的に寝かせた」
「?!な、なんで…っ!」
「…嫌でも思い出したくねぇ過去底から全部思い出して自分で話までしたんだ。さっさと眠りにつかせねぇとこいつが爆発しちまう。…他の話しは俺がやればすむしな」


そう言ってはぁ、とため息を吐き出しながら髪をかき揚げる男。(確か“仁”とか言ったな…)それにしても…にそんな過去があるとは知らなかった…。あと、ここじゃない世界から来た、っつーのも。どうやら…嘘ではなさそうだ。今回ヒル魔に頼まれてこいつの様子見てたが…今日のこの主務の話しを聞いてたらこの怪我以前にも誰かを庇って怪我したらしい。ったく…なんて無茶してんだよ、バカ野郎。


「…あとひとつ、お二方に知ってもらいといてほしいことがある。」
「…なんだ」


急に話し出した仁へと意識を集中させる。真剣な顔から、まだ深刻な話はすべて終わってないらしいな。


「…これを見てくれ」
「「?!!」」
「な、その‥痣…?!」


の左腕の袖を捲る、と‥縛られた後みてぇに痛々しい傷が出てきた。どちらかというと傷跡というよりは青あざに近ぇな…。の白い肌に嫌に目立つ。


「こいつが…がここの未来のことを話そうとすると、この痣から体中を痛みが駆け巡る」
「なに…?!」
「そして…どんなに痛かろうが、この痛みで気絶することはない…いや、正確には気絶することができない」
「そ、んな…!!それじゃあは…―」
「意識がありながら…気絶以上の痛みを生で味わう。」
「…お前がやったのか…」
「…そう‥だと言ったら?」
「…」


ピリピリと空気が緊張感を持つのが肌でわかった。自分でもわからないほど怒りがこみ上げてくる。主務のやつは話の内容と空気に怯えているのか、青ざめてかたかたと少し震えていた。「…仕方ねぇんだよ…」


「こいつはここの住人が大好きだ、だからこそ未来を話してしまう可能性が高い。もしそれでが知っていた以上に現状が悪化してしまったら…またこいつは自分を追い込む」
「…“また”?」



「は‥こっちに来る前、睡眠薬を大量に飲んで意識を手放したんだよ」



息が詰まった。心臓が一瞬止まって、頭の思考回路まで止まった。睡眠薬?が?大量に、飲んだ‥?そんなに、そんなにこいつは、“孤独”に追い詰められてたのか…?自分で自分自身を追い詰めてたのか…?本人はあまり気にしていないのかもしれない、だがあの笑顔にある真実が、あまりにも冷たく、大きかったなんて…。


「…だから、もうそんな最悪の循環を歩かせたくないんだよ、俺は。それの予防線なんだ、この痣は」
「…あぁ」
「あ‥あと、の傷は治りやすくなってるからそんな心配しなくていい。元々強いうえ、俺がちょっといじってるから」
「そうだったんだ!?」


仁の思わぬ爆弾発言に主務が驚きの声をあげる。


「でもは知らねぇから内緒な?」
「あ、はい!」


その主務の返事に納得したのか満足そうに仁という男はふと笑って、俺にさっきとは変わって真剣な視線を向けてきた。


「…‥痣のこと、わかってやっといてほしい」
「…わかった」
「…じゃあ‥を頼んだ」


安心したように眠るを一瞥したあと、ふっと風のように仁という男は消えた。


「…僕‥」
「…?」
「僕、を‥必ず守ります」
「…あぁ、そうだな」


窓から見える景色は、もう夕日が沈みかけていた。




*********




「だぁーいふっかぁあーっつ!!!」


いぇーいというわけで!ちゃん奇跡の大復活にございます!!といってもセナたちと話しをしてから5日間くらいたっちゃったんだけどね!軽く一週間か…なんかこの泥門の校門をくぐるのもどこか懐かしい感じがするなぁ…ってなにわたし朝から陰気臭いんだよばかっ!久しぶりだからって湿気てんじゃねぇーぞたこ!


「ってひとりじゃさみしーねぇー‥」


そう、あいあむおんりーわんです、ただいま。実は昨日の夕方で退院だったんだけどみんなを驚かしちゃえどっきりびっくり作戦ー!という訳で誰にも言わず退院をすませ、次の日である今日の朝練に出向いたわけなんだけ…ど…。


「さすがに早かったかなー…?」


そりゃまだ朝の6時すぎだもんねー…張り切りすぎた…遠足じゃないんだからわたし…。久しぶりに入る、部室…なんだかどきどきする。


「失礼しまーす…って誰もいないっちゅーの!」


がらがらと開けた扉を閉めて中に入る‥相変わらず綺麗だなぁ‥さすがまも姉…。でもロッカーとか細かい掃除はあんまり‥だよね?


「よしっ、いっちょやりますか!!」




***




「…は?」


誰だこいつ。いや、…か?いやでもちょっと待て、入院してるはずのがなんでこんなとこ(部室)(しかも床)で寝てんだ?もう退院…したのか…?まさかこいつ俺らを驚かそうとかなんとか考えて黙って退院してきたのか…?……ありえる、つーかそれしかありえねぇ。


「…おい」
「…すー…すー…」


呼びかけても返ってくるのは規則正しい寝息だけ。…ったくこんなとこで寝やがって、なにしてんだよ。せめて寝るならイスに座ってとかベンチに寝転がってとかあんだろ。なんでベンチあんのにその横の床で寝てんだよ、ばかだろ。つーかんな無防備に寝て襲われたらどうするつもりだ?しかも手に雑巾なんか握って…雑巾?


「…そういうことかよ」


病み上がりのくせに、掃除なんかしてたのか、よ。誰よりも早くきて、馬鹿共が驚く顔を楽しみにするこいつの顔が目に見えて浮かぶ。いつも、誰にでも笑顔で…―この間のときだって、そうだ。江ノ島フットボールで‥なんでだかこいつは糞ドレッドに腕を引っ張られてやがった。俺がこいつを見つけてそばに近寄ってったら、あの糞ドレッド、俺に見せつけるみてぇにを抱き寄せておまけに額にキスまでしやがった…睨んだ俺の目と合ったのをわかっていながら、だ。それと聞こえた、が糞ドレッドを「阿含」と呼び捨てするのが。同級生にでも敬語が出てちまったり、俺にわざわざ挨拶にきたり、礼儀が糞正しいあいつが年上の阿含のことを呼び捨てにしてるねがたまらなく腹が立った。俺には“さん”付けなくせに(まぁ多分糞ドレッドが脅したか無理矢理強引に言わせたんだろうが)


「―…糞ッ…」


イラつきを抑えようとふと目線をに向ければ、まだ白い足や腕に包帯が巻かれていた。…このバカ、完璧に治ってねぇのかよ。糞ドレッドの件もあってこいつの見舞いに一回も行かなかったからな…容態はよく知らねぇが‥相当怪我がヒドかったことは確か、だ。そんな無理してまで、部活に来たかったのか…―?


「…、ばかか、」


いや、ばかだ、俺は。気付けば、の額に自分の口で触れていた。チュッと軽いリップノイズが聞こえて、なんとなく気分が晴れた。…これは、消毒だ。糞ドレッドの。じゃねぇと俺が襲ったみてぇじゃねぇか。


「…って誰に言い訳してんだよ…」


はぁ、とため息をつきながらをロッカールームの横の部屋に運び、そのままイスに座らしてロッカーにいれてあった俺の予備のブレザーをかけてやる。…こんなけ動かしまくっても起きねぇーのかよ…。はぁ、とため息をひとつ漏らしてから、俺はいつものようにパソコンを開いて仕事を始めた








(久しぶりにみた、愛しいかのじょ)













(080928)